【シリーズ第2回・完結】中1で始めて中2で完成させた「国東観光案内AIアバター おにまる」|6か月・のべ12時間の自由研究

【シリーズ第2回・完結】中1で始めて中2で完成させた「国東観光案内AIアバター おにまる」|6か月・のべ12時間の自由研究
目次

こんにちは!現役IT講師のきっちゃん先生です。

前回の第1回からお届けしている、生徒が「国東観光案内AIアバター おにまる」を作るプロジェクト。おかげさまで完成しました。

始めたのは中学1年生の3月。完成したのは中学2年生の夏です。学年をまたいだ、長い自由研究になりました。

そして、先に結果をお伝えします。完成した作品を、プログラミングのコンテストに出しましたが、入賞はできませんでした。それも含めて、記録します。

制作期間は3月から8月までの6か月。作業時間は月に2時間だけ。合計しても、のべ12時間ほどです。

そして今回いちばんお伝えしたいのは、実はツールの話ではありません。このプロジェクトはもともと、生徒の「自由研究」として始まったものでした。

その自由研究で見つかった課題が、予想していたものと違いました。そこがこの記事の山場です。


この自由研究で立てた「3つの問い」

プロジェクトを始める前に、生徒と一緒に問いを3つ立てました。

  1. プログラミングで、何ができて、何が作れるのか?
  2. 自分が住んでいる地域には、どんな課題があるのか?
  3. その技術を使って、その課題を解決できるのか?

ポイントは、この3つを「調べる」のではなく「作って確かめる」と決めたことです。

インターネットで調べれば、「プログラミングでできること」も「地方の観光課題」も、それらしい答えはいくらでも出てきます。でもそれは他人が出した答えです。自分の手で作って、動かして、うまくいかないところまで含めて確かめる。それがこの自由研究の方針でした。


6か月の制作年表

まず、6か月で何をしていたのかを一覧にします。自由研究でいう「実施記録」にあたる部分です。

時期 やったこと
3月 3つの問いを立てる/プロジェクトの全体像をGeminiと整理
4月 Google検索+Geminiで、国東の課題と魅力をリサーチ → 課題は自分の中にあった
5月 アバター「おにまる」制作 → 画像素材の整理 → UI/UXレイアウト設計 → Gemini LIVE APIで音声会話が成立
6月 追加機能:話した内容に合わせて画像が表示される仕組み
7月 多言語の動作確認 → 完成
8月 コンテスト提出用の動画編集・説明文の作成
10月 コンテストの結果発表 → 入賞はできませんでした

作業は毎月2時間だけ。それでも6か月続けると、ここまで進みます。


3〜5月:課題を見つけて、「声で会話できる」ところまで

前半3か月の中身は第1回で詳しく書きました。ここでは、第1回では書けなかったいちばん大事な発見から始めます。

4月:課題は、自分の中にありました

「国東の課題は何か」を調べる月でした。Google検索とGeminiで、いろいろ出てきます。人口が減っている。高齢化している。そういう話です。

ところが、生徒と話していて出てきた答えは、まったく違うものでした。

「国東に住んでるけど、観光に行かないから、おすすめスポットがわからない」

「外に出て食べに行かないから、お店も知らない」

これを聞いたとき、私は少し驚きました。調べて見つけた課題ではなく、自分がそうだった、という話だったからです。

地元に住んでいる。でも知らない。観光案内できるほど、自分の町のことを知らない。

地域の情報が足りないのではありません。情報はあるのに、自分のところまで届いていない。そして、わざわざ調べるきっかけもない。

これが、この自由研究が見つけた課題でした。

💭 私の意見です。この課題設定は、大人には出せないと思いました。「地方の観光課題」を調べれば、インバウンドだの交通アクセスだの、それらしい言葉はいくらでも出てきます。でも「自分が知らない」を課題として挙げられるのは、本人だけです。自由研究としては、ここがいちばんの収穫でした。

そして、この課題が決まったことで、作るものがはっきりしました。「聞けば教えてくれる相手」です。

ここからは、第1回の予告でお伝えしていた「画像素材の整理」と「UI/UXレイアウト設計」の話に入ります。

画像素材の整理 ―― 地味だけど、これも上流工程

リサーチで集めた観光スポットの画像が、気づいたらフォルダの中でぐちゃぐちゃになっていました。「あの写真どこだっけ?」で毎回時間が溶けます。月2時間しかない中で、これは致命的です。

そこでファイル名とフォルダのルールを、生徒自身に決めてもらいました。

これはAIに任せませんでした。どの写真をどの説明に使うかを決めるのは、「何を伝えたいか」を決めることだからです。コードを書くより地味な作業ですが、まぎれもなく上流工程です。

UI/UXレイアウト設計 ―― 「使う人は何を知りたいか」から決める

画面の設計では、機能から決めないことを徹底しました。

「ボタンをどこに置くか」ではなく、「国東を知らない人は、まず何を知りたいか」から考える。そこから逆算して画面を決めます。想定している使う人は、観光客だけではありません。4月に見つけた「地元にいるのに知らない人」も含みます。

手順はシンプルです。

  1. 紙にラフを手描きする(生徒)
  2. そのラフをGoogle Antigravityに渡して実装してもらう(AI)
  3. 動いた画面を見て、違うと思ったところを直す(生徒)

この2と3の往復が、中学生でも画面設計ができる仕組みになりました。ゼロから作るのは難しくても、「出てきたものを見て直す」なら中学生でもできます。

そして5月、Gemini LIVE APIとつないで、アバター「おにまる」と声で会話ができるようになりました。文字を打たなくても、話しかければ答えてくれます。第1回の最後でお見せしたデモが、この時点のものです。


6月:「言葉だけでは、観光案内にならない」

ここからが第2回の本編です。

会話ができるようになって、生徒が最初に言ったのが「これ、言葉だけだと分からなくない?」でした。

おにまるが観光スポットを説明してくれても、そこがどんな場所なのか、聞いただけでは想像できない。自分が知らない土地の名前を音声で言われても、頭に絵が浮かびません。

そこで6月に追加したのが、アバターが話した内容に合わせて、その場所の画像が表示される機能です。

  • おにまるが観光スポットの話を始める
  • その場所の写真が画面に出る
  • 聞きながら、同時に見られる

機能を思いついた順番が大事だと思っています。「こういう機能をつけたい」から始まっていません。「観光案内として足りない」という課題から始まって、機能にたどり着いています。

これは5月に画像素材を整理しておいたから、すぐ実装に移れました。地味な作業が効いてきた瞬間でした。


7月:多言語対応。そして完成

最後の月は、多言語で動くかどうかの確認でした。

ここは、狙って作った機能ではありません。Gemini LIVE APIが話せる言語は、そのまま「おにまる」が話せる言語になります。言語ごとに作り込む必要がないので、動作を確かめるだけで済みました。

つまり、日本語で作ったものが、そのまま海外から来た人にも使える状態になっていたわけです。

ここが、AIと組んだことの一番わかりやすい効果だと思います。

翻訳も、多言語の案内板も、外国語が話せるスタッフも、中学生には用意できません。人力でやろうとしたら、絶対に届かない場所です。それが、確認作業だけで手に入りました。

💭 私の意見です。ただし、これを「中学生が多言語対応をやりとげた」と書くのは、少し違う気がしています。やったのは動作確認で、できるようにしたのはAIです。そこは正直に書いておきたい。すごいのは、AIがそこまで来ているということのほうです。

7月の時点で、作品としては完成しました。


完成した「国東観光AIアバター おにまる」

実際に動いているところをご覧ください。

中学生が、月2時間・6か月で作ったものです。

完成した「おにまる」にできること

作品名:国東観光案内AIアバター「おにまる」

大分県国東(くにさき)半島の歴史や魅力を、AIアバター「おにまる」がリアルタイムで案内する観光ガイドWebアプリです。地域にゆかりのある「鬼」をモチーフにしたキャラクターが、観光客の質問や相談に応えて、おすすめスポットや地域情報を伝えます。

機能は3つあります。

① 声で話しかけると、声で返ってくる

ここが一番の山場でした。使っているのはGemini LIVE APIという、リアルタイムの音声対話ができる仕組みです。テキストでの入力・出力にも対応しているので、声でも文字でも会話できます。

観光地で使うことを考えると、これは大きい違いです。歩きながらスマホに文字を打つのは大変ですが、話しかけるだけなら歩きながらでもできます。「何を作るか」から考えたからこそ、ここにたどり着きました。

② 話した内容に合わせて、その場所の画像が出る

6月に追加した機能です。音声だけだと、知らない土地の名前を言われても絵が浮かびません。

③ Gemini LIVEが話せる言語なら、そのまま応答できる

言語ごとに作り込んではいません。使っているAIが話せる言語が、そのまま使えます。海外から来た人にも、日本語版と同じものがそのまま使えます。


💭 ここは私の感想です。「声で会話できるWebアプリを中学生が作った」と聞くと、すごく難しいことのように聞こえます。でも実際にやったのは、「観光客は歩きながら使う。だったら声がいい」と決めたことでした。難しい技術を知っていたから選べたのではなく、使う人を思い浮かべたから選べた。上流工程というのは、こういうことだと思っています。


8月:作って終わりじゃない。「伝える」までが制作

作品は7月に完成していました。では8月は何をしていたのか。

プログラミングのコンテストに提出する準備です。作品紹介の動画を編集し、どんなサービスなのかを説明する文章を書いていました。

コンテストに出した目的は、自分が作ったサービスを、他人に伝える練習をすることでした。

というのも、作った本人は中身を全部わかっています。でも初めて見る人は何も知りません。

  • このサービスは、誰の、どんな困りごとを解決するのか
  • 何ができるのか
  • どこがすごいのか

これを1分の動画と、限られた文字数で伝える。やってみると、これがコードを書くよりずっと難しい。

生徒は「どこを見せるか」で何度も悩んでいました。全部見せたいけれど、全部は入らない。削るということは、何がいちばん大事かを決めるということです。

コンテストという締め切りと、審査してくれる他人の目があったからこそ、この練習が成立しました。作品を作りっぱなしにせず、外に出す場所を用意する。これは自由研究でいう「まとめ」と「発表」そのものです。

結果:入賞はできませんでした

結果をお伝えします。今回のコンテストでは、入賞はできませんでした。

きれいな成功談にしたいところですが、これが事実です。

ただ、この自由研究で立てた問いは、「入賞できるか」ではありませんでした。3つの問いへの答えは、結果が出る前も、出たあとも、変わりません。

  • 中学生でも、AIと組めば、のべ12時間で動くものが作れた
  • 自分の町の課題を、自分の言葉で見つけられた
  • 作ったものを、他人に伝えるところまでやり切った

💭 私の意見です。結果が出ないと、作ったものの価値まで下がったように感じてしまうことがあります。でも、評価されることと、価値があることは、別だと私は思っています。

そして、作って終わりにせず、外に出して、他人の評価を受けるところまで経験できたことは、この自由研究のいちばん大きい収穫のひとつだと思っています。うまくいかなかったことまで含めて、体験です。

もし、この結果から新しく分かったことがあれば、この記事に追記します。


自由研究の結論:3つの問いへの答え

6か月やってみて、最初に立てた3つの問いにこう答えが出ました。

立てた問い 出た答え
プログラミングで何が作れるか 中学生でも、AIと組めばのべ12時間で動くWebアプリが作れる
自分の地域の課題は何か 国東に住んでいるのに、おすすめスポットも店も知らない。情報が無いのではなく、届いていない
技術でその課題を解決できるか 完全には解決できない。でも「入口」は作れた

3つ目について、正直に書いておきます。

このアバターがあれば国東の観光課題が解決するかというと、そんなことはありません。

そもそも、このサービスの存在を知ってもらわないと使われません。「知らない人に届かない」という元の課題が、そのままサービス自体にも当てはまってしまいます。実際の観光地では電波が届かない場所もあります。おにまるが話す内容も、リサーチした範囲のことしか知りません。

課題は解決していません。

それでも、「聞けば教えてくれる相手」は作れました。国東に住んでいて何も知らなかった中学生が、作る過程でいちばん国東にくわしくなった、という副産物もありました。入口は作れたというのが、この自由研究の結論です。

うまくいかなかったところまで書くのが、研究だと思っています。


6か月やってわかったこと

月2時間の最大の敵は「間があくこと」

2時間の作業が終わると、次は1か月後です。前回何をやったか、本人が忘れています。

対策として、毎回の作業の最後に「次回やることリスト」を残すようにしました。第1回でも書いたとおり、先生が事前にタスクを整理しておき、当日は生徒が判断と実行に集中する。この体制は6か月を通して有効でした。

半年続けたから、機能追加まで行けた

もしこれが「2時間の体験教室」だったら、アバターが喋るところで終わっていました。

6月の画像連動も、7月の多言語も、完成したあとに「まだ足りない」と気づいたから生まれた機能です。一度動くものを作って、しばらく寝かせて、また見る。この繰り返しができたのは期間が長かったからです。

短く濃くやるより、月2時間を半年続けるほうが効く。これが今回いちばんの発見かもしれません。

第1回で挙げた課題は、どう変わったか

第1回で「課題に感じたこと」として挙げた点の、半年後の状態です。

第1回で挙げた課題 6か月後
AIの提案を鵜呑みにしない判断力 「そうじゃない」と言い返せるようになった。画面設計の往復で鍛えられた
用語の壁(API・VRM・フロントエンド) 使っているうちに、意味を聞かなくなった
月2時間の制約 変わらず厳しい。ただし「次回やることリスト」で緩和
実物に触れた経験がないと発想できない 変わらず。今回も先生の作品を見ていたから発想できた

用語の壁は、説明して乗り越えたのではなく、使っていたら消えていました。これは教える側として発見でした。


保護者・先生へ:この自由研究を再現する5つのステップ

同じことをやってみたい方向けに、要点をまとめます。

① 課題は「調べて出てくるもの」より「自分が困っていること」から選ぶ

今回いちばんの学びがここでした。

検索すれば、地域課題はいくらでも出てきます。人口減少、高齢化、インバウンド。でもそれは他人が書いた課題です。子どもにとっては他人事なので、深掘りできません。

今回うまくいったのは、「自分が国東のおすすめスポットを知らない」という、本人の実感から始まったからでした。自分が困っていることなら、「どうすれば解決するか」を具体的に考えられます。

お子さんに聞いてみてください。「自分の町のことで、知らなくて困ったことある?」——ここから始まります。

② 問いを3つに絞って、紙に書いてから始める

「何か作ってみよう」で始めると、途中で目的を見失います。作り始める前に問いを紙に書く。これだけで、6か月ぶれずに進みました。

③ 月2時間でいい。半年続けるほうが効く

まとまった時間を取ろうとすると、いつまでも始まりません。2時間でいいので、毎月やる。そのかわり、次回やることを必ずメモして終わってください。

④ APIキーなどのインフラは大人、創作は子供

ここは第1回で詳しく書きました。APIキーの発行・管理・支払い設定は、必ず大人が行ってください。子供が担当するのは「何を作るか」「どう見せるか」です。

⑤ 締め切りのある「発表の場」を用意する

コンテストでも、学校の発表会でも、家族へのプレゼンでも構いません。他人に伝える場があると、作品は完成します。そして「伝える」練習は、作る練習と同じくらい価値があります。

結果が思うようにならなくても、伝える練習をしたこと自体は、ちゃんと残ります。


まとめ

「プログラミングで、自分の町の課題は解決できるのか」

この問いに、中学生が6か月かけて出した答えは「完全には解決できない。でも入口は作れる」でした。

そして見つけた課題は、インターネットで調べて出てくるものではなく、「自分が、自分の町を知らなかった」という、足元にあるものでした。

きれいな成功談ではありません。コンテストでは入賞できませんでした。でも、自分の手で作って、動かして、限界まで確かめた答えです。検索して出てくる答えより、ずっと価値があると思っています。

AIエージェントは、子供から「作る力」を奪う道具ではありませんでした。中学生が「自分の町の課題」に手を伸ばせるところまで、届く範囲を広げてくれる道具でした。

2回にわたってお付き合いいただき、ありがとうございました。


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