【教室現場から】「AIでハッキング?」と不安がる保護者に、現役IT講師が伝えたい「正しく怖がる」ためのリテラシー

【教室現場から】「AIでハッキング?」と不安がる保護者に、現役IT講師が伝えたい「正しく怖がる」ためのリテラシー
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こんにちは。現役IT講師のケイです。 普段はWeb制作の仕事もしながら、日々小学生からシニア世代まで、幅広い年代の方々と一緒に、デジタルの世界を探求しています。

教室で保護者の方とお話ししていると、最近よく聞かれることがあります。 「先生、この間のニュース見ました? 学生がAIを使ってハッキングしたって…うちの子もAIを使わせて大丈夫なんでしょうか?」

確かに、センセーショナルなニュースを見ると不安になりますよね。 今回は、私の教室での「生のエピソード」を交えながら、AI時代のリスクと、子供たちにどう「倫理観」を教えているかについてお話しします。


エピソード①:AIで「推し」を描く子供たちと著作権

私の教室では、生成AI(Geminiなど)の体験会を行うことがあります。 子供たちの順応性は本当にすごいです。大人が教えなくても、直感的にプロンプト(指示文)を入力して使いこなしてしまいます。

ある時、こんなことがありました。 画像生成AIを触らせてみたところ、みんな目を輝かせて「好きなアニメのキャラクター」を生成し始めたのです。

「先生見て!〇〇(人気キャラ)が描けた!」

完成度は非常に高く、子供たちは大興奮です。 しかし、私はそこで「ストップ」をかけ、全員の手を止めさせました。

「なぜダメなのか」を考えさせる授業

「みんな、その絵はすごいね。でも、そのキャラクターを作ったのは誰だろう? AIかな?」

子供たちは考え込みます。 そこですかさず伝えます。

「そのキャラには、生みの親(作者)がいるんだよ。AIはネット上の絵を学習して真似しただけかもしれない。これを『僕が描きました』ってSNSに載せたら、作者の人はどう思うかな?」

ここで初めて、子供たちは「著作権」「AIの裏側」に気づきます。 ただ機能を使わせるだけでなく、「技術を使う時のマナー(倫理)」をセットで教えること。これが、私の教室で最も大切にしていることです。


エピソード②:ハッキング事件と保護者の不安

冒頭の「ハッキング事件」のニュースが出た時、一部の保護者の方は本当に不安そうでした。 「プログラミングやAIを教えることで、犯罪者を育ててしまうんじゃないか」と。

私はこうお答えしています。

「包丁と同じです。美味しい料理を作る道具にもなれば、人を傷つける凶器にもなります。だからこそ、隠すのではなく『正しい使い方』を徹底して教える必要があるんです」

教室での「同意書」の取り組み

私の教室では、生成AIを利用する際、保護者の方とご本人に「利用同意書」を書いていただくことがあります。 堅苦しい契約書ではありませんが、以下の項目を確認します。

  • 人を傷つけること(誹謗中傷、フェイク画像)には絶対に使わない。
  • 生成したものを、許可なく自分の作品として発表しない。
  • 個人情報を入力しない。

これを「儀式」として行うことで、子供たちの中に「これは遊び道具であると同時に、責任を伴う強力なツールなんだ」という意識が芽生えます。 「同意書」というワンクッションがあるだけで、子供の顔つきが変わるのです。


家庭でできる「正しく怖がる」教育

ご家庭でも、AIやPCを「怖いから禁止」にするのではなく、ぜひ「一緒に触って、一緒にルールを作る」ことから始めてみてください。

「AIってすごいね!でも、時々嘘をつくらしいよ。一緒に調べてみようか?」 「この機能、もし悪い人が使ったらどんなことができると思う?」

そんな会話こそが、最強のセキュリティ(リテラシー教育)になります。 大分県の片隅の教室からですが、テクノロジーを楽しむ子供たちが、道を踏み外さずに未来へ羽ばたけるよう、私も現場で伝え続けていきます。


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